年金分割を忘れずに

心理カウンセラー 大屋ともこ

2019年11月29日 07:57

離婚時の年金分割とは

年金分割とは、離婚時に夫婦のそれぞれが支払った厚生年金(共済年金)を決められた割合で分割する制度です。

この法律ができるまでは専業主婦(パート等の主婦も含む)が離婚した場合の年金水準の低さが問題となっていました。
平成16年に法律が変わり離婚後の夫の年金からの分割ができるようになりました。

夫が払った保険料の一部分(最大50%)を妻が払ったものとして、将来の妻の年金に加えられるようになりました。
夫がフルスペックで労働できるのは妻が家事や育児の大半を受け持ってくれたから出来たことだからですね。

家事や育児も大変な労働なのに、その労働の 寄与分(貢献度)が年金に反映されないということは不公正ということから法律が定められました。

結婚期間中に夫が支払った保険料は上記の理由から夫婦が共同で納めたものとして、妻の将来の年金額に加算します。
夫婦共稼ぎの場合は収入に応じた保険料の大小はあっても合算して割って50%ずつとします。


分割対象は厚生年金(民間企業等)や共済年金(公務員等)だけで、ベースの国民年金(基礎年金)は対象とはなりません。
夫が自営業者で厚生年金や共済年金に全く加入していなければ分割はできません。

年金分割には二つの方法があります

年金分割は 合意分割制度 3号分割制度 があります。



(1)合意分割制度
合意分割制度は夫婦間の合意(公正証書が必要です)または裁判所の決定(調停、審判、判決)による厚生年金等の分割制度です。

①分割の対象になるのは、結婚期間中に夫婦双方が支払った厚生年金等の保険料を合算したものです。

②分割の割合は夫婦間の合意、または裁判所の決定により確定します。
最大で50%です。


(2)3号分割制度


平成20年4月に開始された年金分割の制度です。
「3号分割」とは第3号被保険者であるサラリーマン(会社員や公務員)の専業主婦等(扶養の範囲内のパート含む) が利用できる制度です。

 分割の対象は平成20年4月以降に相手方が支払った厚生年金保険料です。

 分割の割合は例外なく50%です。
法律で定められた事ですので、夫婦間合意や裁判所の決定などは必要ありません。

 事実婚の場合でも利用できます。
合意分割制度の場合はできませんが、3号分割制度は事実婚の場合でも利用できます。
事実婚の場合は厚生年金等の分割には、第3号被保険者期間が終了している事と、事実婚解消を証明する必要があります。




 注意点
平成20年3月以前の支払い部分の分割については3号分割制度の法定以前の支払ですので、この部分は合意分割制度が適応されます。
分割の内容を決めるには夫婦間の合意、もしくは裁判所の決定が必要です。

平成20年4月以降分は法律が定めた例外なき50%分割ですので、夫側が「離婚したくない」などと言って離婚せずにいると別居している妻への年金分割額は今もどんどん増え続けていることに留意しておく必要があります。


(3)分割請求できる期間

原則として離婚後の2年間しか請求できません。(2年間の時効)
よって離婚前にしっかりと決めておくことです。

合意分割と3号分割のどちらの制度を利用すべきか、制度が2つあると「自分はどちらの制度を利用すべきだろうか」と考えてしまいます。

合意分割制度と3号分割制度

合意分割制度も3号分割制度も同時に利用できます。


両制度が利用できるの場合には、一方の制度の利用を申請することによって自動的にもう一方の制度も申請したとみなされます。
夫が正社員のサラリーマンで妻も正社員 でOLという共稼ぎの場合です。

この場合平成20年4月以降も合意分割の制度を利用することになります。
正社員の妻は3号被保険者ではないので 夫婦の合算の後に分割割合を決める ことになります。

合意に基づく年金の合意分割制度を利用した場合、話し合いで分割の割合が決まります

奥さんが寛大な方で30%や40%でも構わないということであれば夫もそれに合意すればそれで決まります。
私の事務所でも一度だけ40%での合意で公正証書を作成したことがあります。
しかしh裁判所での審判や判例では50%となっていますので、ほぼ99%のお客様は50%での分割合意となっています。

もしも離婚の条件の全てで合意が出来ていても夫が年金だけを合意してくれないという場合は、離婚の協議内容を公正証書で作成して(清算条項の欄に「年金分割は除く」と入れます)。
まず離婚だけを先に済ませて、直ぐに年金分割だけの調停申立てをされることをお勧めしています。
夫が嫌だと言い合意できなくても調停後の審判で50%の分割審判が下ります。

合意分割の手続き

1, 年金情報通知書を手に入れる
2, 夫婦の話し合い、または裁判所の決定(調停審判)で分割決定
3, 年金分割の申請

年金分割をするには「年金分割のための情報提供通知書」を必ず入手します。
年金事務所(旧 社会保険事務所)に申し込み10日から2週間程度で送られてきます。



夫婦間の話し合い

情報提供通知書を入手したら年金を 夫婦でどのくらいの割合にするかという(按分割合) を決めなければなりません。

夫婦間で話し合い合意事項を公正証書にする必要があります。
情報通知書に記載されています按分割合の範囲で決めなくてはいけませんが、審判や判例では50%で決定されますので「50%が当然ですよ」という内容で夫に柔らかく説明をされてください。
裁判所での決定では50%なることを主張して、話し合いで合意できなければ、即、裁判所へ調停申し立てを行うことを伝えてください。


年金分割の割合を決める調停

話し合いで分割割合が決まらない場合、家庭裁判所の調停で決定をするという方法があります。
調停の申し立てをすると、裁判所が期日を指定して夫婦双方を呼び出して調停が開かれます。
調停では夫婦が交互に調停室に入室して調停委員(裁判所職員ではない民間人)を介して相手方と話し合いをします。
離婚調停などと同じで、入れ替わりで入室しますので夫婦が顔を合わせることはありません。

それぞれが自分の希望を委員に伝えて、相手方へそれを提示して話し合いを進行させます。

必要な費用は 収入印紙1,200円 郵便切手約800円(裁判所によって若干違います)だけです。
離婚調停と違って年金分割の調停だけでは弁護士は必要ないと思います。

分割割合を決めるだけですし、調停での話し合いで合意できなければ、すぐに審判へ移行して分割割合50%で決定しますから、何十万円も支払って弁護士に代理人を依頼する金銭的メリットが全くありません
離婚調停でも年金分割を離婚と同時並行で決めることができます。

平成20年4月以降に夫がサラリーマンの方と結婚された奥様50%の強制分割ですが、それ以前に結婚された方は離婚協議の内容に年金分割を必ず入れるようにして下さい。

長年、夫婦が別居していても 「離婚はしない!」 と言って更に 「権利だ!義務!」 だと言って離婚を拒否し続ける夫が多くおられますが、5年以上別居が続いていて修復が叶った夫婦を、多くの夫婦問題に立ち会った私は1件も見たことはありませんし、調停後に長期の別居が続いていれば、いくら 「権利だ!義務だ!」 と叫んでも「夫婦の破たん後の長期間の別居」という理由にて裁判になれば確実に離婚になります。
そして別居の間の支払った年金も分割を必ず命じられます。

財産分与については別居中は妻の寄与分は認められませんので、同居の間に形成された財産しか妻への分与の対象になりませんのが、年金分割についてはいくら別居していても離婚するまで納めた年金が分割の対象になります。
財産分与は同居中に形成された財産が分与の対象ですが、年金分割は同居や別居は問わず、離婚した時点まで支払った年金が対象になります。
財産は隠したり借金をしたことにしたりして、離婚をしないと言っている夫のくせにセコイことを画策している夫を見たことがありますが年金分割は支払わないわけにはいきません。
5年以上の別居を伴っていましたら離婚はしないとか憲法違反だとかくだらないことを言っても100%離婚になり年金分割も命じられます。

年金のことを考えますと、夫がいつまでも叶わない修復を夢みて別居を続けることは無意味にあなたの大切な年金財産を半分余計に失うことになりますよ。


調停も済んで別居後5年以上の夫婦の場合、その後に奥さんから離婚請求の気配もないからと、まだ修復を夢見ているポエムなご主人様がおられましたら、早く目を覚まされてあなたから離婚を請求するか、離婚を申し入れるべきです。
財産分与は別居時の残高を分割ですが、年金分割は別居があっても離婚時で支払わなくてはなりません。
当然、現在も婚姻費用分担もたくさん払い続けていると思いますし、年金分割も離婚する日まで分割になりますことを奥様は承知して別居を続けておられると思います。
調停までしてあなたを嫌っていました奥様が、やり直しを本当にすると思いますか?
「年金は離婚日まで分割できますよね?」と大勢の奥様の方からお問い合わせを頂きますし「別居している夫は太っており外食ばかりで高血圧なので近いうちに死にますから!」とまで言われる方もおられます。
別居が長い方は修復など絶対に不可能ですから、せめてあなたの年金だけでも守るためにも早期に離婚をこちらから言われた方が得策です。



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