財産分与の法的たてまえ (鶴田)
民法では、「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる」と規定しており、離婚に伴う財産分与の請求はこれに基づいておこなわれます。財産分与は当事者間の協議によって行われますが、協議が調わない場合や、協議をすることが出来ない場合には、最終的には離婚が合意できてる場合、家庭裁判所の審判によって決めることもできます。
財産分与の具体的基準については「当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して行うもの」とされているだけで、実際には裁判官の広い裁量に委ねられているのが実情です。
よく、「財産分与を私はいくらもらえるのですか」などとズバリ質問されることがありますが、上記のように法律上でははっきりした基準はなく、審判や裁判で最終的には具体的事情により裁判所がどのような判断をするかの問題になってしまうので、このような質問に対し明確な回答をすることは難しいですね。
しかし、このような財産分与の基準を少しでもはっきりさせようと、いろいろな判例などで考え方が示されていますので、ここでは現実の財産分与が審判や判例などでどのように決められているかをお話することにします。
財産分与の基準となる考え方には清算的財産分与と扶養的財産分与の2種類があると言われています。
清算的財産分与の金額は、対象となる財産の分割割合を決めて計算されますが,この分割割合は,夫及び妻が財産形成(勤労だけではなく、家事労働などによる貢献も含む)にどのくらいの割合を寄与したかを考慮して決められます。
具体的な事情によっても変わるので一概にはいえませんが、専業主婦の妻が夫に対し財産分与請求をする場合には、妻の寄与割合は2割から5割程度と認定されることが多いようです。
一方、夫婦共働きで収入格差が無い場合には、家事の負担も過重に負担していた妻に5割を超える寄与割合が認められることもあります。
逆に専業主婦なのに遊んでばかりで家事労働をあまりおこなっていないことが認定されますと2~3割の分割割合になってしまうこともあります。
財産分与の対象となる財産は、婚姻中に貯めた現金・預貯金、購入した不動産などがポピュラーなものですが、当事者の一方が婚姻費用を過大に負担している場合には、財産分与の金額に含めて請求することが出来ます。配偶者が受け取るべき退職金や年金については、これを財産分与の対象とすることは大方認められています。
しかし実際に支給されるのがかなり先である退職金の場合には、実際に支給されるかどうか不確定要素が強いため、離婚時の財産分与の請求が認められないことが多いです。
ここ数年以内に支給される予定の退職金であれば、これを財産分与の対象とする請求は大抵認められますが、離婚時に支払いを命じるか、退職時に支払いを命じるか、具体的な取り扱いは判例によりまちまちです。
年金分割制度は、将来受け取る厚生年金受給権を財産分与とすることについて、ルールを法律上明確にしたことは大いに評価できます。

扶養的財産分与は、収入のない一方配偶者に対する離婚後の生活保障として行われる財産分与です。
婚姻生活中に形成された財産といえるようなものが特に存在しない時に、配偶者の一方に十分な収入がない場合には、離婚後の扶養という名目である程度の金額の財産分与が認められる傾向があります。
法律の建て前上は、離婚した元配偶者は全くの他人であり、元配偶者に対する扶養義務はないものとされているため、扶養的財産分与が認められるかどうかは意見が分かれています。
離婚後3年間~10年間に限り毎月一定額の定期金を支払うよう命じたもの。
配偶者の死亡か再婚まで毎月一定額の支払いを命じたものなど様々です。
しかも金額の算定にあたり相手方配偶者の有責(不貞など)が考慮されるなど、財産分与と慰謝料の区別を明確にしていないものまであるため、これらの事例を統一的に説明することは極めて難しいといえます。
おそらく、原告の請求内容や各家庭の具体的事情にも影響されているのでしょう。
しかし、妻側が専業主婦などの場合は、今までの仕事のキャリアが離婚後も続く夫と違い、妻は一から離婚後に仕事を始めなくてはなりませんので、離婚によって生じるその社会的ハンディへの援助を夫が考えてあげることも早期円満な離婚への早道だと私は考えます。
ある離婚請求で結婚以来専業主婦だった奥さんが夫に対して「あなたも今の会社を退職して一から仕事を探すのだったら、離婚後は私と同じスタートラインになるから、あなたが退職するなら離婚に応じます!」と言いましたが、法的に不可能だとしても、私はその奥さんの気持ちは十分に理解できました。
配偶者が婚姻前から保有していた特有財産は、財産分与の対象になりません。
夫婦の婚姻中に配偶者が取得した財産であっても、それが親からの遺産相続によるものであった場合などは財産分与の対象とならないことがあります。
清算的財産分与は、夫婦共有財産の分割という考え方を採っていますので、基本的に離婚原因とは関係なく請求することができます。
極端な例を挙げれば、専業主婦の妻が自ら不倫をして,それが原因で離婚する場合であっても、婚姻中の生活における妻の寄与が認められる限り、妻が清算的財産分与を夫に対し請求することは法律上可能です。
ただしこの場合は扶養的財産分与が認められるかは疑問ですし、夫の妻に対する慰謝料請求などにより、実際に受け取れる金額は通常の場合より減額されたり、婚姻期間が短い場合等にはマイナスになったりすることもあります。
財産分与は,原則的には当事者間の話し合いで決めるものであり、話し合いの結果財産分与をしないという合意をすることもできます。財産分与請求は,離婚が成立した後ですることもできます。
ただし、離婚の時から2年を経過すると、法律上財産分与請求をすることはできなくなります。
財産分与について当事者間で協議がまとまらないとき,または協議をすることができないときは、家庭裁判所の調停手続を利用することができます。
調停でも話し合いがつかないとき、または当事者の一方が行方不明などの理由で調停をすることもできないときは、審判手続で財産分与の内容を決めることもできます。
離婚訴訟の離婚請求とあわせて財産分与の請求をするときには、家庭裁判所の離婚訴訟における附帯処分の請求として、離婚請求とあわせて財産分与の請求をすることもできます。
私の離婚の場合は私名義のマンションに離婚後も私がそのまま住む代わりに、今の時点でマンションを売却した場合 (売却価格-ローン残債) の金額が夫婦の預貯金の総額に近い金額でしたので、妻に預貯金をすべて分与するいうことで清算的財産分与の金銭的な解決をいたしました。
もしも貯蓄も少なかったり、無かったりした場合、また夫婦の資産である家も残債が売却価格より多いオーバーローンの場合は清算的財産分与は期待できませんので、特に専業主婦だった妻に対しての自立支援金名目の最後のプレゼントとして離婚時に一時払いで○○○万円、もしくは毎月○万円を○年間支払うといった扶養的財産分与の取り決めをすることをお勧めしています。
扶養的財産分与は法的に支払い義務をはありませんが、協議を円満迅速に調えるためにも一考されるべきだと私は考えます。
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Posted by 相談カウンセラー 大屋ともこ

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